降 圧型DC-DCコンバータを充電器に
2008/05/27 Nishimura Hiromi
一個300円で売っている安価な降圧型DC-DCコンバータHRD05003E (出力5〜24V可変にパーツ三個 の追加で作る鉛バッテリー充電用の定電流定電圧電源を紹介します(鉛シールバッテリー用の充電器が目的)。鉛シールバッテリーのデータシートによるとト リク ル充電では充電電圧を13.5〜13.8Vにしなければならないようです。定電圧充電するとバッテリーの充電状態(空の状態)によっては大電流が流れま す。そのため定電圧回路自体が壊れる可能性があります。このように定電圧電源を使用した充電は危険なので止めて下さい。そこで安い定電圧電源に定電流制御の 回路 を組み込み、充電器を作る事にしました。
この回路は定電圧値を設定する事で鉛シールバッテリーだけではなく3V〜14Vの充電器に使え ると思います。ただし充電対象のバッテリーの特性により繋ぎっぱなしができるかどうかは?です。少なくても鉛シールバッテリーでは問題ありませんでした。
● 充電器の問題点:発熱
三端子レギュレータやLM723の電源ICを使用するタイプの電源回路では入力電圧と出力電圧 の差と流れる電流の積は電源回路の損失になります。この損失はすべて熱に変換されます。たとえば入力が18Vで出力が13V、流れる電流が3Aでは (18-13)*3 = 15W の電力が電源回路で消費されることになります。この電力は小型ハンダゴテの消費電力に相当し、放熱をしっかりしないと制御素子を壊してしまう可能性がありま す。また、それ以前に電力がもったいないです。このような損失=発熱を避けるには損失の少ないチョッパー方式の電源が望ましいと思います。
● 定電圧定電流:CVCC
電源回路はインピーダンスが低いのが望ましい(大電流が流れても電圧変動が小さい)。そのため 三端子レギュレータやDC-DCコンバータは非常に低い出力インピーダンスを持つよう設計されています。逆に充電器では大電流が流れないようインピーダン スが高い方が望ましいのです(大電流が流れたら出力電圧を小さくする)。この相反する抑制を持たせるのが今回のプロジェクト(格好良いな〜)の目的です。
もう一つ、安くて簡単な回路の設計(これもカッコイイな〜)も目的です。私としては安ければ作 るより買った方が良いと考えていますし、複雑な回路なら少々高くても買った方が良い。要は面倒、というより根が無精(ちょっと格好悪いな〜)。今回も眠り に入る前に思いついた方法です。
● 出力可変型DC-DCコンバータ改造計画

早速本題です。今回使用した、というより対象に選んだDC-DCコンバータはHRD05003E (出力5〜24V可変)です。なにせ一個300円と安価で間違えて壊しても大きな影響はないからです。データシートによ る と7番ピンに加わる電圧が2.5Vになるよう出力電圧を制御するタイプのチョッパー方式の定電圧回路のようです。こう考えるとHRD05003Eは単なる チョッパー型のオペアンプと考えた方が良いのかも(三端子レギュレータのようにオーディオアンプが作れそうだな!)。

上記はデータシートに載っている回路です。7番ピンに加わる電圧で出力電圧が制御できます。 VR1を小さくすると電圧が下がり、VR2を小さくすると電圧が上昇します(両方小さくすると....回路はショートします)。
確認のため7番ピンを出力の6番ピンに接続すると出力電圧は2.5Vになりました。今回の要点 は如何にして電流を検知し7番ピンに信号を加えるかです。とは言っても簡単な回路で電流を制限するには1つしかありません。トランジスタのVBE(0.6V)を使う方法です。前置きが長かった割には結論が一つしかないだ けに面白くないですね。そうなんです、今回は誰もが思いつく単純なCVCC電源なんです。
● 電流制御
HRD05003Eは 7番ピンの電圧を制御する事で出力電圧を変化させる事ができます。そこで一般的な電流制限回路を上記回路に加えてみます。回路は下記の通りです。

まずHRD05003Eの出力(6番ピン)に電流検出抵抗(0.2Ω)を 付けます。電流が3Aを超えると電流検出抵抗の電位差がPNP型トランジスタの VBEで ある 0.6V を超えベース電流が流れ hfe 倍されたコレクタ電流が流れます。この電流で7番ピンの電位が6番ピンの電位に近づきHRD05003Eの出力電圧が低下します(いつも7番ピンの電位は 2.5Vに制御される)。電流検出抵抗に流れる電流が3Aを超えなければトランジスタの VBEを 超えないのでコレクタ電流は流れず R1,R2 の分圧抵抗で7番ピンの電位が 2.5Vになるよう制御されます。これが電流制御回路の動作原理です。
やっぱり単純ですね。でも追加するパーツはPNP型トランジスタと電流検出抵抗、それにトラン ジス タに大電流が流れないようにする抵抗の3個だけ。当初の簡単な回路の追加という目標はクリアされています。
なお、この方式はDC-DCコンバータ以外にも普通の三端子レギュレータにも応用可能なので手っ取り早くCVCCを作りたい時には便利な回路です。ただオペアンプを使った方式に比べるとトランジスタのVBEを使っているだけに高精度とは言えません。高精度を求めるならTL431とオペアンプを使ってみて下さい。
● DC-DCコンバータを使用したバッテリー充電用CVCC電源

さっそくですが、上記に今回作成したDC-DCコンバータを使用した鉛バッテリー充電用定電流 定電圧(CVCC)電源の回路図を示します。電流制限抵抗を 0.2Ωとしたので流れる電流制限は約3Aになります。入力はDC20V以上が望ましいと思います。私は手持ちにAC27V1.7A のトランスがあったのでこれを整流・平滑化し36Vにして使いました。そのため入力部の電解コンデンサーには耐圧50Vのものを使っています。調整は簡単 で、バッテリーを接続する前にVRで出力電圧を 13.5〜13.8V に設定します。これで調整は終了。後はバッテリーを接続し充電です。

一応、作ったものがこれです。小さいユニバーサル基板一枚に作り込めます。というか、私が作る 回 路の多くがこの基板で、これ以上大きい基板になると回路が面倒、配線が面倒、そんな理由で仕事以外ではできるだけ避けるようにしています。
いや、自慢ではないですが(自慢かな?)、これより大きな回路を作る事はあります。稀ですが、 暇になると......作ってみたくなる回路があるんです。

これは自分でも自慢できるくらい正確なインダクタンスメータです。普通のインダクタンスメータ にはブリッジを使った方法とか、同期整流を使った方法や共振回路を使った方法があります。でもそれだと他人と同じで面白く無い。そこで考えたのは面積 を利用する方法。コイルに加える交流電圧と流れる電流のグラフはコイルに抵抗が無ければ円・楕円になります。ところがコイルに抵抗があれば、この楕円が抵 抗の分だけ回転します。でも電圧と電流が作る面積は変わりません。この面積がインダクタンスになります。この特性を利用しインピーダンスを計測できるだろ うと考え作った回路が上記の大きな基板です。回路基板は倍の面積があるでしょう!(エッヘン)。どうですか、私でも大きな回路(面積だけですが)を作る事 はあるのです。でも....コイルの抵抗、これがくせ者こ。数十Ωを超えるとオペアンプの電圧動作範囲をいとも簡単に超えてしまうの です。 結局、トロダイルコアのような抵抗の小さいものしか計測できない中途半端な計測器に(こんな理由から面積を利用したメータが無かったんでしょうね)。 もう少し頭が働けば作る前に判りそうなものなんですが、作ってみないと判らない。何故か大きな回路を作ると上手くいかない事が多い。結局はできるだ け面積の小さな回路を組んだ方が使える回路が出来上がる、そうなってしまったんです。 話が飛んでしまった! 話を元に戻して、

これが充電器の配線図です。配線する時は裏返し利用して下さい。赤い■は左から 100KΩのVR、2SA1015、電流選択SWです。上記実機写真は3A固定のタイプなので電流選択SWはありません。
● 結果
何の問題も無くシール型の鉛蓄電池の充電器が出来ました。充電しながらのバッテリー使用も問題 ありません。また充電しっぱなしでも特に問題はないようです。これがCVCCの利点なんでしょうね。
結局、トランジスタ1個に抵抗2本、この追加でDC-DCコンバータを使用したバッテリー充電 器が完成してしまいました。今回は結果だけを見たらあまり面白く無かったようです。でもこの回路は普通の三端子レギュレータにも応用可能なので充電用の小さなCVCC電源を作る時には便利だと思います。
今日の話はこれで終わり.....ではありません。本当は.......失敗談の方が.......面白いので..... 追加です。
● 失敗談
最初、何も考えずHRD05003EをトランジスタかFETに近いもんだろうな〜と勝手に思い 込み下記のようなNPN型のトランジスタで電流制限回路を試してみました。

これが勝手に思い込みで作ってしまったトンデンモない回路。出力電圧も5V以下でまったく動作 せず。不思議に思い各部の電圧を計測。そうしたらコレクタよりエミッターの電位が高いのです。これでは制御できませんね。電圧を調整するVRをまわした ら。久々のヒットというか爆発が。2SC1815が、これがまた派手に吹っ飛びました。いつもの事、可哀想ですが2SC1815は私にとって前線の突撃部 隊、威力偵察のようなパーツです(最近は可哀想になり2SC1213、でも周波数特性が悪いので)。それが壊れるまで何が起きたのか。上記回路図を書いて 納得するまで気が付かなかったと は....トホホホです。
思い込みというのは恐ろしいものです。よく考えれば7番ピンの電位は6番ピンより低いのが当た り前のはずなのですが。普通のNPN型トランジスタを使用した定電圧回路ではコレクタ電位の方が高いはずと思い込んでしまった訳です。慣れとは恐ろしいも ので す。この程度の回路だと回路図を書いて....なんてしません。最初に回路を書いておけばこんなことには、たぶんならなかったと反省。
最近、歳のせいか思い込み、これが多くなってきました。以前、プログラム開発では思い込みで失 敗する事が多かったのです。最近では本業というかハードでも同じ間違いを犯すようになったようです。そろそろリタイヤなのかな〜
ん、よく考えたら趣味にリタイヤはありませんね。本業で.......寂しいな〜
● 備考
HRD05003Eのデータシートを見ると過電流時の特性は4A付近で垂直降下型の様です。ということは過電流保護に定電
流回路が既に組み込まれているのだと思います。過電流を無視すれば今回紹介した追加回路無しでも鉛バッテリーの充電に使えることになります。でもデバイス
の過電流対策をそのまま使うのは危険というか...まあそんな訳で低電流回路を追加した次第です。データシートによると3A流すと6Wの損失が。それに3A流せるのはデバイスの温度が.....こりゃ結構きついようですね。5A型の方が良いのかも。
それから本追加回路でも最低電圧は2.5Vまでしか制御
できません。よって負荷抵抗が
0.83Ω以下では3A以上流れてしまうことになります。くれぐれも出力短絡には注意して下さい。 まあ充電回路の危険より鉛バッテリーの短絡の方
が奇麗な花火が見れるだけに派手で危険なのですが。実験で12Vを超えるとか1Aを超えるような回路をいじる(いらう[関西弁]、ちょす[秋田弁])時にはメガネは必須です
ね。