XR-2206 を使用したファンクションジェネレータ(回路基板の製作)


2009/10/10 Nishimura Hiromi


 私の研究室には MRI で撮影したデータから眼瞼周囲の立体モデルを作る目的で購入した MDX-15 があります。これで回路基板が作れるか試してみました。手元にファンクションジェネレータ IC があったので、とりあえず TAN-005 に載っていた下記回路の基板を作ってみることに。

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図1:TAN-005に載っている回路


 上記回路図では周波数設定用に 1MΩのボリュームを使っています。実際にブレッドボードで試すと何故か 150KΩ以上になると矩形波立ち上がり時にヒゲが発生します。そこで周波数設定用に 100KΩ、微調整用に 10KΩのボリュームを使いました。それ以外は図1の回路そのままです。


● OmniGraffle で作図した配線図


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図2:OmniGraffle にて配線図を描く

部品と結線を別レイヤーで描くと後の書き出しで便利


 これまで長年にわたりユニバーサル基板を使っていたのでピン間隔を 1/10インチで描いています。最後にラインの太さを 26 ポイントに変更し配線図(ピンとラインを選択) 1026bpi で tiff のエクスポートファイルを作る。1026dpi にしたのは MDX-15 の解像度に合わせるためで特に大きな意味はありません。半分にしてもたいして違いは無いようです。


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図3:書き出した tiff ファイル


 ここでライン同士が接触していないか確認します。Dr.Engrave ではベタ画像から輪郭を抽出し輪郭を切削するのでライン同士の間隔はできるだけ狭い方が良いと思います。隙間さえ有れば隣のパターンの切削があるので狭くてもショートの心配はありません。


● ピン位置を白抜きにしておく


 部品を挿入する穴の位置を小さな白抜きにしておきます。こうすることで切削時に銅箔上に凹を作り穴空け時のドリルの逃げを予防します。穴あけは手持ちのミニルータのドリルで簡単にできます(少々粉が舞い上がる欠点がある)。

 図3ではピンの白抜きが潰れている所もありますが、実際には 1026dpi なので拡大するとはっきり穴が見えます。


● PhotoShopElements にて BMP に変換


 Dr.Engrave は BMP ファイルしかインポートできません。そこで OmniGraffle で保存した tiff ファイルを PhotoShop Elements で開き、モードをインデクスに変更し BMP ファイルとして保存します。ここまでは Macintosh による作業です。 最初から Windows が使えるなら、その方が楽だと思います。私の場合、単にメインとなる環境が Macintosh なのでこのようにしているだけです。


● WindowsXp の Dr.Engave  にて BMP をインポート


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図4:Dr.Engrave を開き、先の bmp ファイルをインポートする


 PhotoShopElements で書き出した BMP ファイルを MDX-15 に付いてきた文字切削用の Dr.Engrave で読み込みます。Dr.Engrave は文字用切削用のソフトですが BMP ファイルが読み込めるので基板製作用にはとても便利なソフトです。雑誌に載っているプリント基板のパターンをスキャナーで読み込み切削データに使えるので 夢が広がります。


● WindowsXP の Dr.Engave  にて縮小


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図5:bmp ファイルをインポートしたときの様子

 これだと大きすぎるので縮小


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図6:グリッドを 2.54mm に設定する


 私の場合には図2の時点で 1/10 インチだけ広げた枠を描いています。「グリッドにスナップ」をオンにしてから縮小するとピン穴がグリッドに正確に一致させる事ができます。枠が無いとグ リッドにスナップする位置が特定できないので、枠は重要です。また枠は基板が出来てから基板を切り離す目安にもなるので枠は必ず描く(切削)ほうが良いで しょう。


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図7:縮小しピン位置をグリッドに合わせる

更に反転しプリント基板の裏から見た状態にする

(切削面は裏なので!)


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図8:回路を複製しカット基板に合わせる

(一つだけならそのまま)


 私の場合、配線図を描くときは部品面から配線を描くようにしています。大きな理由は無いのですが部品のハンダ付けをするとき確認しやすいからです。これを Dr.Engrave で反転させ切削面としています。ここいら辺は適当に。


● 切削条件の設定


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図9:切削条件の設定


塗りつぶし Off

ツールダウンスピード 2.0mm/sec

ツール移動スピード 1.5mm/sec

ツールダウン位置 -0.02mm

ツールアップ位置 0.50mm

切削ピッチ 0.02mm


 上記のような切削条件で切削を実行しています。使用したドリルは、径が 0.25mm の文字用カッター ZEC-A2025-BAL です。 径が 0.13mm のドリルを試したことがありますが、切削開始位置と終了位置の微妙な差からパターンのショートが発生する可能性があります(実際にショートを経験)。細い ドリルを使う場合には注意が必要です。今回試した回路は細いパターンを作る必要がなかったので。というよりこれからも無いと思いますが。


● カット基板の取付け


 MDX-15のワークプレートにカット基板を取付け切削を実行する訳だが、カット基板の取付けに苦労しました。最初、四方 からカット基板を押さえる金具を作り試してみました。しかし、カット基板が大きいと中央が盛り上がるようです。そのため基板の端と中央部でパターン溝幅に 違いが出る不具合が見られました。また金具だとセットするカット基板の大きさが限定されてしまいます。小さな回路を作るに基板が無駄になるようです。


 結局は、MDX-15 の標準仕様である両面テープで貼付けるのが一番確実でした。また両面テープならセットする基板の大きさに問題は無くカット基板を有効に使える利点がありま す。両面テープですが、紙ベースのものはノリ面が基板やワークプレートに残り取り去るのが面倒です。セロファンベースのものが便利です。それから両面テー プの幅が太いと剥がすのに無理な力を必要とします。できるだけ幅の狭い方が楽です。私は 5mmの物を使っています。


● 問題点:ワークプレートの傾き


 切削した回路基板のパターン溝に左右で幅が違う事に気が付きました。最初はカット基板の取付けに問題が有ると思っていまし た。でも何度試しても同じ現象が見られます。これはカット基板の取り付けの問題ではないと思われます(ワークプレート自体が左に傾いているようです)。パ ターン切削用にストレートのエンドミルを使う場合には判らないと思います。でも今回は山型形状を持つ文字用カッターを使っているためワークプレートの傾き が顕著に現れるようです。この傾きを調べるため深さ0.00mmで直線を切削してみました。左では銅箔の表面に傷がつく程度であるが右側はある程度の深さ で銅箔が削れます。銅箔の厚さが 0.035mm と仮定すると、銅箔の厚みまで削れている訳ではないので傾きは 0.035mm 以下と思われます。


 MDX-15 のような CNC 装置を使うのは初めてなので、この傾きの大きさが普通なのかそれとも異常(不良品)なのかは判りません。素人の私がワークプレートの傾きを調整し 0.035mm 以下にできるかと考えれば無理に決まっているので普通と思う事に。実際問題として回路基板切削に大きな影響は無いのでこのまま使う事にしています。


 これを修正するにはワークプレートにカット基板を直付けするのではなくアクリルの台を付けそのアクリルの表面を削り水平出 しをします。カット基板は水平を出したアクリル板の上にセットします。このようにするとカット基板をドリルと平行にセットできると思います。でもそこまで 要求するような精密な基板を作る気もないので当分はこのままでしょう。


● 問題点:ドリルカッターの初期位置設定


 Dr.Engrave で基板切削をするに、切削開始前、ドリルを原点(カット基板の上)にセットする必要があります。これが意外に面倒な作業です。 MDX-15 のDown ボタンでドリルを下げるのですが、少しでも気を抜くとカット基板を削ってしまい正確な原点に位置させることができません。不要なカット基板の切れ端を使い 原点位置セットの練習をお勧めします。

 私の場合、カット基板直上1mm以下までドリルを下げ、そこからボタンを間欠的に押しドリルの回転音が微妙に変化する位置 で止め、そしてもう一回ボタンを押すとカット基板が削れ粉が少しまき散らされるところを原点としている。そのためツールダウン位置は銅箔の厚さ 0.035mm より薄い -0.02mm としている。

 まあ、何回か失敗すればコツもつかめるので大きな問題ではないでしょう。使うマシンにも違いがあると思うので人それぞれ好みの条件設定をするのが一番ではないかと。


● MDX-15 にて切削

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図10:MDX-15

http://www.rolanddg.co.jp/product/3d/3d/mdx-20_15.htm


 上記条件で切削を行うと一回路あたり 47分かかりました。ツール移動速度を速くすると短時間で切削可能です。ツール移動速度を 5mm/sec まで上げてみたことがありますが、パターンが若干歪んできます。これはドリルの硬性が弱くドリルが変形(進行方向と逆に曲がる)するためのようです。ただ しパターンのショート、その他の不具合はありませんでした。奇麗な切削を望むならツール移動速度は遅めにしたほうが良いでしょう(ただし切削に時間がかか る)。パターンが少々変形してても切削を早く終わらせたい場合にはツール移動速度を速めにした方が良いと思います。これもまた何回か失敗を経験すると最適 値が判ります。


● 切削結果


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図11:切削が終わった状態(4回路分)

見て判るよう非常に奇麗な切削パターンが得られる。


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図12:パターンを拡大した様子


 想像していたより奇麗な切削パターンでした。銅箔のバリも殆ど見られず、このまま使えるようです。残っている小さな余分 な銅箔は穴空け時のドリルで取り除く。もしくはハンダ付け時に半田コテを当てると簡単に剥がれます。まあそのままでも悪さはしないので気にする必要はない と思います。


● パターン溝


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図13:パターン溝の拡大図、最小目盛りは 0.5mm


 使用したドリルは、径が 0.25mm の文字用カッター ZEC-A2025-BAL です。よって切削するパターン溝の幅も 0.25mm であると思っていました。でも実際には上記画像のよう線の幅は 0.5mm より若干広がります。Dr.Engrave はモノクロ画像の輪郭に沿って掘削するデータを MDX-15 に出力します。そのため図5に示すラインで掘削するので狭いランドは隣のパターンの分も合わせ二回切削されることになります。結果、上記図13のようパ ターン溝 0.5mm強の幅で切削されることになった訳です。


 また、今回使用した文字用カッターは一般に使われるストレートのエンドミルではなく先端が山型になっているドリルです。山 型だと切削深さを少しでも深くすると切削幅が広がってしまう特性があります。私の場合、深く掘り下げたため 0.25mm の文字用カッターでも実際には二倍の 0.5mm で削ってしまったということになってしまいました。まあ私のように 1/10 インチ幅のユニバーサル基板で回路を作ってきた私のようにピン間に更にパターンを這わせようと思わない場合にはこれで十分だと思います。


 この山型の文字用カッターの利点は硬性が高い点にあります。ツール移動スピードが少々速くてもエンドミルが曲がる事無く折れる事も無い。これがφ 0.5mm のエンドミルだった時には何回折っているか想像もつきません。


● パターンのチェック


 図13のように切削幅が 0.5mm 以上あるのでパターンのショートはまず発生しないようです。でも図12の中央左側に三角形の削り残りがあります。これが剥がれてショートする可能性もある のでチェックすることが大事だと思います。私の場合、このような小さな切削残は穴あけ時にドリルの先端で削ったり、半田ごてを当て熱で剥がしています。 思った以上に簡単に剥がれるので面倒ではありません。比較的大きな切削残も半田ごての熱で剥がれるのですが、汚くなるし面倒なので大きな切削残はそのまま にしています。


 上記切削には径が 0.25mm の文字用カッターを使いました。これを 0.13mm に変更するとパターン溝は細くなりますが切削開始位置と終了位置に微妙な差があり銅箔のブリッジが残る事があります。径が 0.13mm の文字用カッターを使う場合にはパターンのショートに気をつける事。またハンダ付け時の半田ブリッジにも注意する必要があります。0.13mm のカッターの使用経験が少ないので一概には言えませんがツール移動スピードを下げるとショートが少なくなるようです。またスピンドルユニットとカット基板 の間をできるだけ短く(限度はあるが)なるようドリルをセットするとドリルの曲がりが小さくなるので切削開始位置と終了位置の差が無くなりパターンの ショートも減るようです。


● 基板をカットし穴をあける


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図14:基板をカットし穴を開けた状態

サンハヤトのプリント基板用Pラックスを塗っている


 CNC なので穴あけも MDX-15 で行えば良い様に思うのですが、実際には無理です。第一にパターンの切削に使用するのは文字用カッターなのでドリルを変更する必要がある(ドリルの変更は 面倒)。第二に穴の位置を入力する必要がある。第三に MDX-15 では基板にドリルが届かないので治具が必要になる。このような理由から穴あけは普通のミニルーターを使い手作業で行っています。

 一番簡単なのは図3のように穴の位置を空けておけば穴の位置がへこみ穴空けドリルが逃げることなく穴あけができます。これが一番簡単です。


● 部品のハンダ付け


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図15:OmniGraffle で描いた配線図を見て部品を配置しハンダ付けをする


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図16:ハンダ付け面

何故かパターンに半田をのせてしまう

アマチュア無線時代の癖なのか(銅箔腐食予防のつもり)

いまはレジストを散布しているので不要かも


● 完成したファンクションジェネレータ


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図17:ケースに入れた状態


 一台しか作らないのに切削基板を作っても時間がかかるだけ意味の無い作業。完成するまでは面白いのですができあがると虚脱 感が。回路基板製作は一台しか作らない物には不要かもしれません。電源回路とかアンプ基板とか色々な装置に使い回しが出来る。そんな回路には便利かと思い ます。


 私の構想は、電源やアンプ等の汎用回路の基板をデータベースのように作っておき、実際に装置を作るときは回路図から配線図を描くのではなく、それらモジュールの組合せで回路を作っていく、これが私の望みです。いつになるかは判りません。


● でもがっくり:正弦波にヒゲが!


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 上記は今回制作したファンクションジェネレータの波形です。何故か矩形波に同期して正弦波にスパイク状の波形が見られます (何かの過渡特性とは思うのだが)。単に回路を真似て作ってもダメなようです。電源ラインの周波数特性が悪いのかと思いパスコンを追加したが駄目でした。 波形がオーバーシュートしているようなので内部のオペアンプのフィードバック特性のような気がします。今回は切削による基板製作がメインなので、暇になっ たら対策を考えようと思っている。


● 最後に


 切削による回路基板の作製、インターネット調べると色々と苦労されている方がいるようです。これは私の想像ですが、Web ページには苦労した事は腹が立つので書いておくが、マトモなものが作れる様になると、それが当り前になり Web ページに書く必要も無いと思っているのでは。こうすると上手くできるとか紹介してくれれば助かるのですが。


 今回の回路基板切削を試してみようかと思ったきっかけは Robot-Laboratory さんのページを見て自分の研究室にある MDX-15 でも回路基板が作れる事を知ったからです。更にインターネット検索すると http://fablab.marcboon.com/pcb/ があり参考にさせていただきました。


使用したソフト


(1)OmniGraffle

 私のメインに使用しているコンピュータが Macintosh なので、配線図の作図用に OmniGraffle を使用しました。Draw 系のソフトなので配線の幅を変えるに便利です。


 Windows ユーザの場合には何を使うんでしょうか? たぶん、もっと使いやすいソフトがあるんのでしょう。


(2)PhotoShopEmements

 OmniGraffle で保存した配線図(パターン画像)を Dr.Engrave で読み込める BMP ファイルに変換するために使用。画像を BMP ファイルに変換できるのなら何でも良いと思います。私の場合、たまたま Mac に入っていたから使っただけです。


(3)Dr.Engrave

 MDX-15 に付いてきた文字切削用のソフト。これで MDX-15 が制御できます。