■ 小型 DC モータの電力波形
[2009/03/31] Nishimura Hiromi
普通、電力計といったら例えば家電製品の電力を計測し待機電力がどの程度あるのか調べたりする物ですね。それが目的なら市販品を買った方が良いと思います(安いし作る苦労が無い)。例えば[2000MS1] ワットチェッカーなんて5千円以下なのでお買い得かも(現在、欲しい度が高い品)。
一昨日製作した電力計(らしきもの)は、残念ながらそのままでは家電製品の電力を測る ことができません(電圧入力部の分圧抵抗を変更すると可能です)。普通、オシロスコープで表示するのは電圧波形もしくは電流波形(電圧に変換してから)で す。電力も同じようオシロスコープで見ることができないか。そんな理由から作ったのが今回の電力計です。オシロスコープに乗算機能があれば作る必要は無 かったのですが。残念ながら私が使っているオシロスコープには乗算のような高級な機能がないので作ってみました。
● 目的
それではさっそく電力計で波形を見る事にします。最初に試したのはジャンク(DVD- R) から取り外した小型の DC モータです。今回の試験は直流で駆動する DC モータの電圧・電流波形から電力波形が推測できるか(電圧が一定なので電力波形は電流波形に一致するはず)を確認するのが目的です。またモータはインダク タンスの固まりなのでコイルに流れる電流が切り替る。その切り替り時に発生するサージとサージ対策を確認する事です。
● 試験回路

図1:試験回路
今回の試験に使用した回路を図1に示します。使用した DC モータは DVD-R ドライブのヘッド位置調整用に使われていたもの。電流は 0.01Ωの検出抵抗をDC アンプ(約300倍)を介してオシロスコープに入力。
● 無負荷時のモータ駆動電圧・電流波形

図2:赤:駆動電圧波形、青:電流波形
駆動電圧9.32V,平均電流は 21mAで電力計表示値は 0.195W
無負荷時の電流は正弦波に近い波形である。電流波形が思っていた以上に奇麗なのに驚く。電圧値はほぼ一定だが 1KHz 周期で PK-PK 3.52V のサージらしき波形が見られる。これが電流切り替り時のサージと思われる。
● モータに負荷をかけ消費電力を約1Wにしたときのモータ駆動電圧・電流波形

図3:赤:駆動電圧波形、青:電流波形
駆動電圧は変化無くサージが増加する程度であるが電流波形はサイン波からタンジェント波のように変化している。これから 電力波形を想像するに電圧がほぼ一定なので電力波形は電流波形に似た形状であろうと予想される。しかし電圧サージが電力波形にどの程度影響するかは不明。
● 無負荷時のモータ電力・電流波形

図4:赤:電力波形、青:電流波形
赤の電力波形と青の電流波形は位相が若干ズレているがほぼ同じような形状である。ただ電力波形には大きな変動が見られ る。これは電圧波形と電流波形からは予想できなかったサージ変動である。無負荷時のモータの平均消費電力は約 0.1W であるがサージでは 1.2W の急激な変化が見られる。これ程大きいとは思わなかった。
● モータに負荷をかけ消費電力を約1Wにしたときのモータ電力・電流波形

図5:赤:電力波形、青:電流波形
赤は図3と同じようモータに負荷を与え電力計で見た負荷が1Wになった時の電力波形である。赤の電力波形と青の電流波形 は位相のズレが少なくなったように見える。電力波形には無負荷時より更に大きな電圧サージ見られる。電圧と電流の波形からそう大きな変動はないと思ってい たが電力波形で相当に大きなノイズが発生している事が判る。これがラジオのノイズ源でしょう。
● サージ対策でコンデンサー追加
サージ対策としてモータにコンデンサーを追加したらどうなるか試してみた。

図6:赤:電力波形、青:電流波形
モータに 0.47μF のコンデンサーを追加し
電力計表示値でモータに約 0.5W の負荷をかけた時の波形
見て判るようヒゲ状のサージは無くなったのだが振動が発生するようになった。考えてみたらモータのインダクタンスとコン デンサーは両方ともエネルギーを溜めるが消費しないデバイス。並列共振回路を作ってしまったようです。そういえばサージを消すスナバー回路はコンデンサー に抵抗を直列に接続し電力を消費するようにしていました。コンデンサーの追加で高い周波数成分が減衰するだけで高周波ノイズ対策にはなるようだがサージ対 策にはならないようです。
● サージ対策でスナバー回路追加
サージ対策としてモータにコンデンサーに抵抗を直列に接続したスナバー回路を追加

図7:赤:電力波形、青:電流波形
モータにスナバー回路(0.47μF、10Ω)を追加し
電力計表示値でモータに約 0.5W の負荷をかけた時の波形
赤の電力波形にスナバー回路の抵抗の効果が奇麗に表れています。抵抗の電力消費は伊達では無いようです。
● サージ対策でスナバー回路追加:その2
スナバー回路の定数を変更

図8:赤:電力波形、青:電流波形
モータにスナバー回路(0.47μF、27Ω)を追加し
電力計表示値でモータに約 0.5W の負荷をかけた時の波形
スナバー回路の定数を調節したのが上記図8である。適切な定数を選ぶと小さく短い時間のスパイクにすることができるのが判ります。
● 感想
とりあえず、モーターの電力波形を見る事ができました。モーターにはインダクタンスがあるので負の電力値も有りかな~と予想していたのですが。マイナスの電力(瞬間的な発電)は無さそうです。想像と違っていたということで当初の目的は達成したように思えます。
今回もまたスナバー回路の強さを再認識しました。