■ AC100V 機器用電力計(Max200W)
[2009/04/19] Nishimura Hiromi
「電力計」 は自作小物の電力波形を見るために作ったものなのですが、いざ使ってみると色々と問題が。特にホール素子の抵抗が 2KΩ以上あるのに、それを駆動するための電源が±5Vと非常に低い点(増幅率が高くノイズが大きい)。また計測可能電圧範囲が±15V程度と狭い点。結 局は市販品のようにAC100でもつかえるようにしないといけないだろうということになり AC100V 機器用の電力計を作ってしまいました。最初は市販品の購入を考えていたのですが結局自作の誘惑に勝てず.....
一番の問題は「トロダイルコアの磁気飽和について」 に書いたように磁気飽和でした。特に、インバータ式の蛍光灯やスイッチングACアダプタは瞬間的に表示消費電力の10倍近くまで大きくなります。想定した 計測範囲は 0.1W〜200W ですが瞬間的に 2KW まで上昇する可能性がありトロダイルコアが磁気飽和しないようにする事が重要のようです。
● 実機と回路図

図1:完成したAC100V機器用の電力計
回路電源をトランス式にしたのでケースが大きくなってしまいました。
上のBNCコネクタは電力波形観測用です。
出力は絶縁型にすべきだが面倒なので直接です。

図2:電力計回路図
電源電圧は±12Vを使用
ホール素子用の V-I 変換にオフセット調節は不要かもしれない。
温度補正はまったくない。様子をみて温度補正回路をくわえようか。
こんな簡単な回路で電力計測ができるのだから驚き!


図3:上→表面、下→裏面
裏面の隙間に 4.7μFのコンデンサーを敷き詰めている。
積層セラミックコンデンサが沢山余っていたので使ってみただけ。

図4:使用したトロダイルコア
今回はピークで10A流せるよう12回巻きにした。
抵抗負荷なら 700W まで計測できるはず。
余裕をみて最大 200W程度までは大丈夫だろう。
P.S.
その後、磁気飽和が心配になったので6回巻きに変更。
抵抗負荷では 1KW まで計測できた。
図2の回路でAC100V 用の 200W電力計を作った。抵抗負荷なら 500W まで大丈夫とは思うが自信が無い。最高1KWのオイルストーブで 734W の表示値になったのでコアの磁気飽和は予想の通り 10A 程度であろう。
DVM には余っていた4・1/2 桁のものを使用。最終桁が±5程動く。安い 3•1/2 桁の DVM で十分と思う。電力波形が気になるのでオシロスコープに出力できるようにしている。暇になったら絶縁型にしようかと思っている。
P.S. その後、トロダイルコアの巻数を6回巻に変更し純粋な抵抗なら 1KW まで計測できるようになった。
● 電力波形(100W の白熱灯)
さっそく電力波形を観察してみた。最初は 100W の白熱灯である。

図5:100W白熱灯の電力波形
抵抗負荷なので電圧波形を二乗した波形になっている。奇麗な正弦波にならないのは電圧波形が歪んでいるため(自宅は電力網の末端なので電圧波形が台形)。
● 電力波形(23W 蛍光灯)
次は作業台で使っている公称23Wのインバータ形式蛍光灯。

図6:23Wインバータ式の蛍光灯
実際の消費電力は21W程度なのだが上記図6を見るとピークで 170Wまで上昇する。平均が21Wでもピークが 170W ということは設備に負担をかけているということか(高調波出しまくり)。

図6の電力波形のパワースペクトラムが上記グラフです。奇麗な高調波が電力線に乗っかるようでうす。
● 電力波形(充電中のスイッチングACアダプタ)
インバータ式の蛍光灯とほぼ同じ電力波形になるのが稼働中のスイッチングACアダプタです。

図7:充電中のスイッチングACアダプタ
消費電力が30W程度なのにピークでは 180W まで上昇しているのが判ります。スイッチングACアダプタを10個同時に使えば瞬間的に 1KW を超えるだろう。で、24V10Aのスイッチング電源を260Wで使ってみたらピークで1V(1KW) になりました。トロダイルコアの12回巻きは少々心配です。
● 電力波形(待機中のスイッチングACアダプタの波形)

図8:スイッチングACアダプタ 12V2Aの待機中の電力波形
待機中のスイッチングACアダプタの波形である。実に変な波形である。何でマイナスに振れるのか? そうそう、スイッチン グACアダプタの待機電力は 0.33W と思った以上に少ない。これには驚いた。トランス式のACアダプタをスイッチング式に変えるだけで待機電力が半分以下にできそうです。
● 電力波形(トランス式ACアダプタの波形)

図9:トランス式ACアダプタ 12V 1.3A の待機電力波形
待機中のトランス式ACアダプタの電力波形である。待機電力は 1.8W と思った以上に多い。何故に奇麗な波形をしないのだろうか。電力がマイナスの方向にも振れているので....... それにしても待機電力が 1.8W とは。コイルの抵抗損失や磁気損で待機電力が多くなるのだろう。トランス式ACアダプタを使っていると結構暖かい。待機電力が理由のようである。この二峰性の山は何なんだろう?

そうそう前に紹介した絶縁電源、このトランスの待機電力を計ってみたら 26W でした。こんなに多いとは思いませんでした。ちなみに電力波形をみるとピークtoピークで 126W です。
● 電力波形(30Wの半田ごて電力波形)

図10:30Wの半田ごての電力波形
セラミックヒータとはいえ純粋な抵抗なので面白みの無い波形である

図11:ダイオードを直列に接続し消費電力を半分にした時の様子
半田ごての温度を下げるためダイオードを直列に接続している。波形が一つおきになる。ただそれだけ。ダイオードによる半田ごての電力調節、簡単なので使ってみてはいかがでしょうか。
● 電力波形(70Wコンプレッサーの電力波形)

図12:70Wのコンプレッサーモータの電力波形
抵抗負荷のような波形だが負の方にも振れているのでインダクタンス成分があることが判る。モーターはもう少し汚い波形と思っていた。コンデンサーを使用した単相誘導モーターは意外に奇麗な波形をしている。
● 電力波形(へヤードライヤーの電力波形)

図13:嫁さんが使っているヘヤードライヤーの電力波形
モーターは30W程度。電力の殆どはヒーター用でした。
温風の温度を一定にする制御回路が組込まれているようで
電力波形は滑らかに奇麗に変動していました。
送風だけなら図12と同じ波形。上記は温風スイッチをONにし温度を最低にしたときの電力波形。このドライヤーはトライアックで温度調節をしているようです。
● 気になったので6回巻きに変更
ここまで電力波形を見て来て気になる事が。どうもスイッチングACアダプタは消費電力が20Wでも瞬間的には10倍にもなってしまうようだ。計測範囲を 200W としても瞬間的には 700W を超える可能性がある。それに手元にあるオイルヒーターの電力が計測できないのも癪にさわる。そこでトロダイルコアの巻数を半分の6回巻きに変更してみ た。予想では1400Wまで計測可能と思われる。さっそくオイルヒーターで試したところ前回は 700W 位で止まっていたのが 1000W まで表示された。これで 200W までなら大抵の機器の電力計測ができるのではないだろうか。
● 力率補正している機器が見当たらない
手元にある機器の電力波形を見てみたが力率補正をしているようなものが見当たらない。100W以下程度の機器では力率補正はしないのかもしれない。そこでインターネットで検索したら「重要性高まる力率補正、デジタル制御でコスト削減」という記事があった。力率補正の重要性は高まっているようだ。これから作る装置の電源には力率補正の回路を組込む必要があるだろう。
でも面倒なので電池式になるだろうな〜
● 感想
電力の数値だけだと面白く無い。やはり電力波形があると負荷の特徴が判断しやすい。市販の電力計、実際のところ力率の悪い 場合でも正確な電力を計測しているのだろうか。この電力計の校正方法だが、最初は普通の抵抗をつかって AC100 で行うつもりでいた。実際に試すと自宅のACの電圧がコロコロ変動しうまく校正できない。そこで定電圧電源を使用し電圧入力部に 20V の電圧を加え、トロダイルコアには 5A の直流電流を流し 100W として校正した。この電力計はトロダイルコアとホール素子を使った乗算器なので直流でも校正ができる。これがこの電力計の特徴である。
今回の乗算回路はトロダイルコアとホール素子。トロダイルコアの温度特性、さっぱり判らない。でも単なるコアなのでそう大きな変化は無いのでは。またGaAs系のホール素子は電流駆動にすると温度特性は非常に良い事が判って いる。そう考えると乗算回路の温度特性はそんなに悪く無いだろう。と最初は思っていた。でも何故か朝方の気温の低い時間帯に使用すると +0.5W 程度のオフセットが生じる。いつもの事ながら温度には苦労する。真面目に作るなら温度特性を補正しなきゃダメだな!