■ 変 わった放電器の製作
[2006/11/12]
最近バッテリーのバラツキ (同じように充電してても一本だけ早く容量が無くなる)が多くなり困っていました。前に作ったニッ ケル水素バッテリー用の放電器(4本直列)でたまに放電させているのですが回復しません。考えてみたら4本直列では 一本の容量が少ないと残り三本が容量を残したまま放電が終了してしまうのが原因ではないかと。ひょっとしたら前に作った放電器は直列に接続して使用する バッテリーにとってあまり良い物だとは言えないような気がしてきました。
そんな訳で新しい放電器を 作る事に。バッテリーのバラツキを無くするため単三または単四電池単独(個別)に放電させる回路を考えてみました。とうぜん充電は個々のバッテリーに同じ 電流で充電するよう直列充電をさせるつもりです。原理的には獣医さんの電 子工作とパソコン研究室と同じ考えのものです。違いはリレーのかわりにFETを使い最終放電電圧をきっちり 1.0Vにする事です。試した回路を下記に示します。

基準電圧の発生には LM431を使いました。LM431で作れる最低電圧は2.5Vで 1.0Vを作る事ができないので、まずLM431で3Vを作り、抵抗回路で1Vを作っています。この1Vの基準電圧とバッテリーの電圧をLM324で比較 し出力をMOS-FET NDS9936 のゲートに送ります。この回路はバッテリーのシャントレギュレータのようなものではないかと思います。バッテリーの負荷抵抗は 1.6Ωにしています。電流は 600〜800mAと少々多いですが前回の 200mAでは放電時間が長く、できるだけ早く放電を終了したいという事から単四の1C放電を目安に 1.6Ωにしています。
バッテリーが基準電圧より 高いときFETのゲート電圧は10.7Vでした。このときドレイン・ソース電圧は 0.083Vでした。抵抗は結構熱くなりますがFETは触ってもまったく温度の上昇が確認できません。バッテリーの電圧が基準電圧に近づく(電圧差約 2mV位)とゲート電圧は 1.8V程度になります。以後、バッテリーの電圧は基準電圧と同じ1Vを維持したままの放電になります。このような理由から放電を再開させるボタンはあり ません。バッテリー電圧が1V近くになっても少量ですが、だらだらと1Vになるまで電流は流れ続けます。半日放置していたら電圧は1Vを維持したまま流れ る電流は12mAになっていました。放電させたまま1日以上放置しておく事は無いと思うし、放置してもバッテリー電圧は1Vを維持するので問題は無いと思 います。
● 製作
単三・単四型バッテリー4 本を同時に放電させる事を想定しているので基準電圧は1回路、それ以外は4回路作っています。いつものようにユニバーサル基盤に部品を置き錫メッキ線で配 線しています。実体配線図らしきものを下記図に示します。ブレッドボードを使った試験回路でバッテリーと負荷抵抗をワニ口クリップで接続したところ想定し た電流が流れず悩みました。FET、負荷抵抗、バッテリー間はできるだけ太い線で配線した方が良いと思います。

この回路をケースに入れ たものが下記写真です。

単四型のニッケル水素充電 池で試験している様子です(単三型の電池ケースは底の方にあります)。放電中は赤のLEDが明るく輝きます。バッテリー電圧が1VになるとLEDは微かに 光ります(この移行は1〜2秒です)。放電中のバッテリー電圧計測は以前に紹介したSwordFishを 使いました。
● 放電試験結果_1
単四型のニッケル水素バッ テリー(850mAh)の放電試験結果を下記グラフに示します。

黒はもう20〜30回 (もっとかも)以上充放電を繰り返した古いバッテリーで、充電後に24時間放置したものです。赤は黒の放電後に充電し、充電直後すぐにこの放電器で放電さ せた時の放電特性です。維持電圧が少々低いのが気になりますが古いバッテリーなのでこんなものかもしれません。これでも電子手帳(カラーなので消費は激し い)には十分なバッテリーです。
グラフを見ると両方とも きっちりと1Vで放電終了している事が判ります。デジタルテスターでは安定した電圧の計測が出来るのですがSwordFishを 使うと上記グラフのようにノイズが多く含まれます。何故かな〜
● 放電試験結果_2
数年前に購入した、まだ 10回も充電を繰り返していない単三型のニッケル水素バッテリー(2300mAh)の放電試験結果を下記グラフに示します。

このバッテリーで二回の放 電試験を行っています。黒は充電直後の一回目の放電試験です。容量を計算(バッテリー電圧x抵抗1.6Ωの時間積分)すると 1603mAhでした。赤は二回目の放電結果です。一回目の放電直後に充電し、充電終了直後ただちに放電させた結果です。容量は1864mAhでした。公 称の容量は2300mAhなので一回目の放電では69.7%の容量があったことになります。二回目の放電時では81.0%の容量であったことが判りまし た。放電により約11%、約250mAhの容量増加が認められます。放電電圧が一定になっている電圧は一回目も二回目もほぼ同じ電圧でした。以上より、こ の放電器を使う事でバッテリーの容量が増えたのではないかと思う(早すぎる結論ですね)。
● 感想
今回の放電器はバッテリー を個別に1Vになるまで放電させる事を目的にしたものです。前回はリレーを意識し設定最終放電電圧になると放電そのものを中止するようにしていました。前 回の放電器では放電電流が多いと最終放電電圧を1Vに設定してもバッテリーの内部抵抗の分も含まれる電圧で放電を終了させていることになります。そのため リレーが動作する電圧を1Vではなく0.7Vにしたりしていました。それが良いのか悪いのか、ず〜っと気になっていたところです。
今回の放電器は指定した電 圧になったら放電自体を終了させるのではなく、バッテリー電圧を1Vに維持する方法を試してみることにしました。どちらの方法が良いのかどうかしばらく 使ってみないと判りません。少なくてもバッテリー内部の電気化学的な状態を安定させておくにベターな方法ではないかと考えています。さてどんなものか、
● P.S.
実は、この放電器を作る 前、もう一つ獣 医さんの電子工作とパソコン研究室の回路を試しています。異なる点はバッテリーでリレーを駆動しているのではなく外部電源でリレーを 駆動しています。放電終了電圧はトランジスタのVBEが約0.6Vになる特性を利用しています。トランジスタ1個では放電終了時の電圧でリレーを駆動でき る電流が確保できないのでもう一つトランジスタをダーリントン接続しています。普通のダーリントン接続では同じNPN型のトランジスタを二個使い初段のエ ミッターを次段のベースに接続しています。これだと2つのトランジスタを合成したVBEは0.6x2=1.2VになりVBEを放電終了電圧の基準に使えま せん。そこで次段をPNP型にし初段のコレクタを次段のベースに接続しています。そのため合成してもVBEは0.6Vのままです。ただし次段のに大きい ベース電流が流れるので220Ωの抵抗を使い電流を制限しています。

回路図

ブレッドボードで試験中。こ のワニ口クリップで失敗!

実体配線図 (TopView)

基板

完成した放電器(ダイソーの ケースに入れた状態)
この回路では放電終了電圧 が2SC1815のVBEである 0.65Vになります。これを作って試しているうちにこの放電終了電圧が気になった訳です。公式にニッケル水素バッテリーの放電終了電圧は1.0Vらしい です。それなら1.0Vになるまで放電させ、それ以後は1.0Vを保持するようにしても良いのではと思ったわけです。